倒れ付すとも。

自分が満足して死ねればそれでいいのです。

泣いた

 無様に息をしている。

 

 

 7月に緊急搬送されて3日間入院した。自殺未遂ではなく、昼職も夜職もフルでこなし続け30連勤以上を繰り返した過労が祟って。貧血で輸血寸前だった。原因はまだわからない。後遺症は未だある。

 

 馬鹿みたいに働き続けて、代償は重かったとはいえ金は手に入ったからそれを元手に一人暮らしを始めた。息をするのがこんなに楽なことは人生で久しぶりで、不眠症は治った。

 でも一人暮らしはともかく金がかかる。高校から今までの貯金を切り崩し生きていくのがつらくて、派遣の風俗の仕事は1度やめたくせに今日また新しい店に面接に行った。

 

 面接を乗り越え下着姿の写真を撮ることになった。写真を撮るのは女の人だった。彼女が出てきた瞬間私は息を飲んだ。

 あのひとに似ていた。

髪も長い、お化粧も綺麗で、体つきも女性的で、全然違うって分かってるのに息苦しくなった。目も眉も笑い方も優しい手も似ていた。自傷痕を上手く隠す写真を撮ってくれた。帰り際、そっと肩を抱いて彼女はもう自分を傷つけないで、自分を大切にしないのはこの店が最後にしたほうがいい、って優しく囁いた。

 初出勤の日までちゃんと生活出来る?頑張れる?って聞かれた。はい、大丈夫ですって答えた。

 

もうダメだった。

 

 帰り道声を上げて泣いた。今1番欲しかった優しい言葉を1番好きだったひとに似た顔で掛けられて、ずっと一人で頑張ってきた心が糸が切れたみたいにこわれて、私はずっと泣いている。ああ私、自分を大切にしてって言われたかったんだ。まだそんな自己愛を持ち合わせていたんだ。まだ引き摺っているんだ。まだ愛されたがっているんだ。

 

 悲しくて、悲しくて、嬉しかった。

 これからもっと頑張らないといけなくて、我慢しないといけないことが沢山あって、投げ捨ててきたものは沢山あった。だけど、きっとやれる。この未練を抱えたまま私は生きていく。それでいい。あのひとを最後の人にして生き続けるのは、私の最後の望みだから。最後に、あのひとに言えた本心だったから。まだやれるよ、無様に息をしていける。だから大丈夫。