踏み切る話
10月5日の夜、私は賭けに踏み切った。
はたから見たら馬鹿なんだろうな、と思いつつも、こうでもしないと腹は決まらなかっただろうし私の中では良かったのだと思わないとやっていられない。
また恋人から友達に戻ろうって言われた。
あんなに苦しかったあの日々に戻れって言うのか。しかも今度は目の前で他の人といちゃついてんの見てろってことらしい。とまあ、自分勝手に憤ってみたりしたものの、結局彼女の言った「疲れた」に返せる言葉は何も無いわけで。しかもこれはずっと私が望んでいると口にしていたことだ。私以外の誰かと彼女がしあわせになるハッピーエンド。
幾ら過去にすがりついてもそこには自分の怠慢とコミュニケーションの下手さ、大きく空いた心の虚だけが横たわっていた。
すぐに割りきれなかった。向こうはとっくに私の事を過去にしてるのが気に食わねぇなと思った。全部受け入れてニコニコ笑ってなきゃいけないのに、反省した上で何事も無かったようにいなきゃいけないのに、大人らしく、キチンと振る舞わなくてはならないのに。なにも追いつかないし苦しいし腹立たしいし悲しい。今までの全部の我慢が溝に捨てられた気分(そういうわけではないのに)だった。
何度目かの死にたいを思った。
別に今回は死んだところでなにも解決もしない。ただ私が死に、他人のウェディングドレスに遺書を書き連ねたとて、彼女が幸せになる時に過去の悲劇の一部、ちょっとしたストーリーとして消化される。それを痛いほどわかった上で、何も変わらない結論を眺めて、私が採る行動はあまり残されていないなと思った。
こんなグチャグチャな想いをそのまま、私は大人として振る舞えない。完全に諦める切っ掛けとか理由とかそんなものが欲しかった。
手馴れた方法を使おうと思った。半分は本気、半分はそうならない事を祈って。また私が、なんにもないように笑って、彼女の期待に沿って生きられるように。それが出来ないなら死ぬように。