倒れ付すとも。

自分が満足して死ねればそれでいいのです。

幕引き

恐れていた事態だ。

 

その存在は私の上位互換だった。

歳上で、余裕があって、まともで。人を虜にするキャラクターを作ることが出来て、絵がかけて小説が書けて動画が作れて、なによりあの人の全てを肯定して、甘やかして。全部私じゃ手が届かない。逆立ちしたって勝てやしない(最も私は逆立ちができない)。

 

勿論あの人は虜になった。存在が相互だって、愛してるって言い合ってた。昔の私がこの愛を受けたらその存在は死ねと言われていただろう。私はそんな事しないけども。特別な渾名を付けあっていた。二人をカップリング名風に呼んでいた。そして私は後回しになった。

私の小説はその存在との些細なリプライに勝てなかったし、私との約束はその存在との会話に勝てなかったし、私のSOSはその存在の生放送に勝てなかった。私の自殺未遂はその存在の投稿したイラストに比べたらゴミ同然だった。

 

ああそっか。思った。これが上位互換か。あの人にとっての理想の愛だ。私じゃ渡せないものだ。

 

じゃあ私に価値はあるか?

 

せめてこの2人を邪魔したくない。

 

怒りが湧くこともあった。私には許さなかったことを簡単にやってのけることを、恋人への愛と友愛としての愛を区別できないから自分だけを愛せと怒ったくせにいざ自分となれば簡単に区別した上で私を蔑ろにすることを、人の時間をゴミか何かだと思っているのかと思いきや私の時間だけをゴミだと思っていることを、どこまでも自己中心的なことを怒りかける。だけどダメだ。それは相手の精神衛生を害することになる。何も言うまい。何も言えるわけが無い。あの人を不快にさせてまで主張できる私の不快などない。私の感情にそんな価値はない。

私はあくまであの人の幸せを願っているのだ。

 

時々思う。過去の私への非道な行いを全部その存在にバラしてやりたいと。何もかもめちゃくちゃにして死んでやりたいと思う。若しくは今よく思っていないことを全部ぶちまけて怒り狂って見せて、捨てられて、知らないところで死んでゆこうかと。一度取りやめた売春をもう一度約束を取り付けて何もかも捨てて死んでやろうとか。

 

けれど今日新たに思ったのだ。既にその存在に全てを引き取られてしまっているのだから、私はただ静かにいなくなるだけだと。それ以外何も望まれちゃいない。ギリギリ黒子が許されるかもしれない。舞台裏で奔走する位は許されるかもしれない。だけど1番綺麗な終わりは、きちんと私がいなくなることで実現するのだ。徐々にフェードアウトして、その存在にキチンと引き継いで、いなくなる。それしかない。私の内面で渦巻く下らない怒りと嫉妬と悲しみは葬らなければならない。主張して何を変えようというのか。私はあの人に幸せになって欲しい。そこに私がいることは無い。多分望まれてもいない。敗北を一つ一つ噛み締めたら、私はどこへ行こう。